世界遺産ペルセポリスの碑文と壁画とは？遺跡の場所や見どころ解説

古代ペルシャ帝国の栄華を今に伝えるペルセポリスは、その壮大な建築物とともに、碑文や壁画に秘められた歴史的な物語を語り続けています。
イランのファールス州に位置するこの世界遺産は、紀元前518年にダレイオス1世によって築かれ、その後のペルシャ帝国の中心地として栄えました。
この記事では、ペルセポリスの碑文と壁画が描く歴史の一端を探り、遺跡の場所やアクセス方法、さらに見どころを徹底解説していきます。

 

 

ペルセポリスの碑文と壁画とは？その歴史と背景を徹底解説

 

 

世界遺産の中には、エジプトの「メンフィスとその墓地遺跡」のように建造当時に近い遺跡もあり、観光地や特集番組で有名です。
一方で、同じ遺跡の中でも、建築物の一部や跡地が文化遺産として登録される遺構と呼ばれるものもあります。中東の世界遺産、ペルセポリスもそのひとつです。

ペルセポリスは、イランにある古代ペルシャの遺跡であり、ユネスコの世界遺産に登録されています。紀元前518年にダレイオス1世によって建設が始まり、その後のペルシャ帝国の中心地として栄えました。
ペルセポリスは、ペルシャ帝国の偉大さとその文化の繁栄を象徴する都市であり、ダレイオス1世やクセルクセス1世といった偉大な王たちの貢献が色濃く残る場所です。

ペルセポリスの碑文が語る歴史的背景とは？

ペルセポリスの遺跡に残る碑文は、古代ペルシャ帝国の歴史と文化を鮮明に伝えています。これらの碑文は、当時の王たちの功績や信仰、さらに彼らが築いた帝国の広がりを物語る重要な記録です。

まず、ペルセポリスに刻まれた碑文の中でも特に注目すべきは、ダレイオス1世やクセルクセス1世といった偉大な王たちが自らの業績を讃える内容です。
これらの碑文には、王たちがどのようにして広大な領土を征服し、統治したのかが記されており、ペルシャ帝国がどれほどの力を持っていたかがわかります。
例えば、ダレイオス1世の碑文には、彼が築いた法律や制度、または神への信仰心が詳細に描かれています。これにより、彼がただの征服者ではなく、優れた統治者であったことが理解できるでしょう。

また、ペルセポリスの碑文には、多言語が使用されている点も重要です。これは、ペルシャ帝国が多民族国家であり、広範囲にわたる文化を包括していたことを示しています。
エラム語、古代ペルシャ語、アッカド語などが使用されており、これにより帝国の多様性と広がりが感じられます。

碑文の場所や形式も興味深いポイントです。多くの碑文は重要な建物や王の墓の近くに刻まれており、その配置には王たちが後世に自らの名を永遠に伝えたいという意図が込められていると考えられます。
これらの碑文は、当時の人々にとって王が神に近い存在であり、その力と栄光が永遠に続くことを信じていたことを示しています。

総じて、ペルセポリスの碑文は、単なる文字の羅列ではなく、ペルシャ帝国の栄華を象徴する重要な文化財です。
それぞれの文字に込められた意味を紐解くことで、当時の人々の生活や価値観、そして王たちの偉大さを深く理解することができます。

ペルセポリスの壁画に描かれた人物やシーンの謎

 

ペルセポリスの壁画は、まるで古代ペルシャの世界を映し出す窓のようです。これらの壁画には、儀式の場面や王族、神々が描かれており、それぞれのシーンが当時の社会や信仰を反映しています。しかし、それ以上に興味深いのは、これらの壁画に隠された意味や意図です。

まず、ペルセポリスの代表的な壁画として挙げられるのが、アパダナ宮殿に描かれた「ペルシャの兵士たち」の行列です。
この壁画は、ペルシャ帝国の兵士たちが整然と並び、王に忠誠を誓っている姿を描いています。兵士たちは同じ姿勢で並んでおり、服装や武器も統一されています。
これは、ペルシャ帝国の軍隊が非常に組織的であり、王に対する絶対的な忠誠を象徴していると考えられます。

一方、タチャラ宮殿の壁画には、王が神々と共に描かれているシーンが見られます。
このような場面では、王が神の代理人として描かれており、彼らの統治が神聖であることを示しています。
また、王の頭上にある日輪や翼を広げた神鳥は、王権が神から授けられたものであることを象徴しているとされています。このようなシンボルは、王がただの人間ではなく、神に選ばれた存在であるというメッセージを強調しています。

さらに、ペルセポリスの壁画には、異民族が貢物を捧げるシーンも描かれています。ペルシャ帝国が多くの民族を支配し、その威光を広げていたことを示しています。
異民族が異なる服装や特徴を持って描かれていることから、ペルシャ帝国が多様な文化を包括していたことがわかります。また、彼らが王に貢物を捧げる姿勢は、王の威厳と帝国の繁栄を強調するための重要な要素です。

これらの壁画に描かれた人物やシーンは、単なる装飾以上の意味を持っています。
それぞれがペルシャ帝国の宗教的、社会的、政治的なメッセージを伝えており、当時の世界観を理解するための貴重な手がかりとなります。ペルセポリスを訪れる際には、ぜひこれらの壁画に注目して、その奥深い意味を感じ取ってみてください。

ペルセポリスの見どころアパダナ宮殿

アパダナ宮殿は、ペルセポリスの中でも最も壮大な建物の一つであり、儀式や重要な会議が行われた場所です。
柱廊と彫刻が美しく、特に「ペルシャの兵士たち」を描いたレリーフは圧巻です。

タチャラ宮殿

ダレイオス1世が個人的な住居として使用したタチャラ宮殿も見逃せません。
この宮殿は「鏡の宮殿」とも呼ばれ、繊細な彫刻と石の装飾が見事です。

ハディシュ宮殿

クセルクセス1世が建設したハディシュ宮殿は、彼の名を冠した豪華な建物で、広大な敷地と装飾の美しさが特徴です。

王の墓と石碑

ペルセポリスの背後の丘には、ダレイオス1世や他の王たちの墓があります。これらの墓には、ペルシャ帝国の栄光を讃える彫刻と碑文が刻まれています。

ペルセポリスの基本情報

 

ペルセポリスは紀元前に栄えたアケメネス朝ペルシア帝国の都市の遺跡です。
イランの乾燥し岩が多い一帯、2000年以上前に確かに存在したとされる宮殿群の石造りの柱や壁が残されています。

エジプト、マケドニア、そしてアケメネス朝ペルシア、大きく入れ替わる超大国の歴史を残す遺跡は、
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作、
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、
唯一のまたは少なくとも稀な証拠として文化遺産に登録されることになります。

さらに、
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連すると紀元前から現代まで続く歴史の証明としても高い評価を受けています。
ユネスコの公式サイト参照

ペルセポリスの地理

ペルセポリスは、中東の大国イランのファールス州に残る遺跡です。
ファールス州は乾燥した山岳地帯で、北西から南東に走るザーグロス山脈によって東西に分断された地域です。

北部と北西部の山岳地帯は、1年を通して乾燥こそしている地域ですが、夏の暑さと冬の寒さの差は少なく比較的穏やかな気候です。
中央部は冬が穏やかな雨季になり、夏は暑く乾燥しています。

南部と南東部は、中央部に近い気候で冬は穏やかですが、夏は中央部よりと厳しい酷暑に見舞われます。
イランの乾燥した気候は、洪水や微生物の活動による分解が穏やかで、古代の遺跡が残りやすい特徴があります。

ペルセポリスとアケメネス朝ペルシア帝国の歴史

ペルセポリスはアケメネス朝ペルシア帝国の都という説が有力視されています。

多くの世代が社会科の授業で見聞きしたことがあるアケメネス朝ペルシア帝国は、紀元前550年 -から紀元前330年の間、現在のイランやイラクの地域から西はトルコやギリシャ、東はインド北西部一帯までを支配下に納めた大国家です。

紀元前330年にマケドニアのアレクサンドロス大王によって国が滅ぼされるまでの間、貿易を栄えさせ離れた地域の交流を活性化したことが明らかになっています。
広大なアケメネス朝ペルシアの中で、ペルセポリスは行政と宗教行事の中心都市とされています。

紀元前509年から紀元前457年まで出来事が書き留められた公文書によると、ペルセポリスは帝国の新年祭の会場とされ、諸民族からの貢納を受け取り、王族が行事を取り仕切る場所と書かれています。
また、天文観測所としての機能も持ち、暦の制定に重要な役割を持ったと考えられています。

これらの宗教行事は、紀元前486年から紀元前424年までは行われていることも明らかになっています。

ペルセポリスとマケドニアのアレクサンドロス大王

アケメネス朝ペルシア帝国は、紀元前331年、マケドニアのアレクサンドロス大王の侵攻によって変わり果てた廃墟に姿を変えることになります。

現在はタフテ・ジャムジード（ジャムシードの玉座）と呼ばれる遺跡が発見され、石造りの建造物が当時の都市の発展を物語っています。

また、アケメネス朝ペルシアを滅ぼしたマケドニア側の記録では、ペルセポリスで押収した財宝は、当時のアケメネス朝の首都とされるスサで獲得した黄金の3倍にも上る量であったとされています。

経済と外交に関わる首都スサに比べて、多くの財宝が保存されていたことは、ペルセポリスが帝国崩壊直前の時期でも重要な都市とされていたことの証でもあります。

一方、古代ギリシアの歴史家クレイタルコスの『アレクサンドロス伝』では、ペルセポリスがアケメネス朝の王都の名として書かれており、経済と外交のスサ、行政と宗教行事のペルセポリスのどちらかが首都であったかについては、歴史書によって違いがあります。

ペルセポリスを訪れる前に知っておきたい観光情報

ペルセポリスへの訪問を計画している方にとって、事前に知っておくべき観光情報や注意点は非常に重要です。ここでは、ペルセポリスへのアクセス方法やベストシーズン、さらに現地でのマナーや安全情報について、具体的なアドバイスをお届けします。

ペルセポリス遺跡の場所とアクセス方法を徹底ガイド

ペルセポリスは、イラン南部のファールス州に位置する壮大な遺跡で、アケメネス朝ペルシア帝国の都として栄えた場所です。この歴史的な地を訪れるには、いくつかの手段があります。ここでは、ペルセポリスへのアクセス方法と周辺の観光情報を詳しく紹介します。

ペルセポリスの場所

ペルセポリスは、シーラーズ市の北東約60kmの場所に位置しています。シーラーズはペルセポリス観光の拠点として最適な都市であり、遺跡までは車で約1時間ほどの距離です。周囲は乾燥した山岳地帯に囲まれており、古代の面影を色濃く残す風景が広がっています。

イランへのアクセス方法

イランへのアクセスは、主要都市であるテヘランのイマーム・ホメイニ国際空港を利用するのが一般的です。多くの国際便がこの空港に到着します。

シーラーズまでのアクセス方法

• 飛行機: テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港からシーラーズまで国内線を利用するのが一般的です。フライトは約1時間半で、シーラーズ国際空港に到着します。この空港には国内外からの便が多く、アクセスは比較的容易です。

• 鉄道: テヘランからシーラーズまでの鉄道も利用可能です。所要時間は約15時間と長めですが、ペルシャの風景を楽しみながらゆったりと移動したい方にはおすすめです。

• バス: テヘランや他の主要都市からシーラーズまでの長距離バスも運行しています。バスは快適でリーズナブルですが、移動時間が長くなるため、日程に余裕がある方に適しています。

シーラーズからペルセポリスへの移動

シーラーズ市内からペルセポリスへの移動は、タクシーやツアーバスを利用するのが一般的です。タクシーはシーラーズの主要ホテルや空港から利用でき、交渉次第でリーズナブルな料金で遺跡までの往復が可能です。ツアーバスを利用する場合は、ガイド付きのツアーも多数あり、遺跡の歴史や背景を詳しく学びながら観光できます。

 

観光のベストシーズン

ペルセポリスを訪れるのに最適な時期は、春（3月～5月）と秋（9月～11月）です。この時期は気候が穏やかで観光に最適です。夏は非常に暑く、冬は寒いので、訪問時期を選ぶ際には注意が必要です。

ペルセポリスの見どころベスト5: 碑文と壁画を巡る旅

ペルセポリスは、広大な敷地に数多くの建造物や彫刻が点在する、まさに歴史の宝庫です。ここでは、初めて訪れる方にぜひ押さえていただきたい見どころベスト5を紹介します。これらを巡ることで、ペルセポリスの魅力を存分に感じることができるでしょう。

1. アパダナ宮殿

アパダナ宮殿は、ペルセポリスの中でも最も壮大な建物で、儀式や重要な会議が行われた場所です。特に注目すべきは、入口に並ぶ「ペルシャの兵士たち」のレリーフです。これらのレリーフは、兵士たちの忠誠心と帝国の威厳を象徴しており、その細部まで精巧に彫刻された姿は圧巻です。

2. タチャラ宮殿

タチャラ宮殿は、ダレイオス1世が個人的な住居として使用した建物で、「鏡の宮殿」とも呼ばれます。ここでは、繊細な石の彫刻や装飾が至る所に施されており、古代の工芸技術の高さを感じることができます。特に、宮殿の柱や壁に刻まれた神々や動物の彫刻は見逃せません。

3. ハディシュ宮殿

クセルクセス1世が建設したハディシュ宮殿は、広大な敷地と豪華な装飾で知られています。壁に彫られたレリーフや彫刻は、当時の王室の生活や儀式の様子を鮮やかに描いています。特に、宮殿の広間に描かれた宴会のシーンは、ペルシャ帝国の豊かさを象徴しています。

4. 王の墓

ペルセポリスの背後にある丘には、ダレイオス1世や他の王たちの墓が刻まれています。これらの岩窟墓は、巨大な岩を削り出して作られ、複雑な彫刻と碑文が施されています。王たちがどのように偉業を成し遂げたかが刻まれており、ペルシャ帝国の歴史を深く知る手がかりとなります。

5. 百柱の間

百柱の間は、ペルセポリス最大の建造物で、その名の通り、100本以上の柱が並ぶ巨大なホールです。かつては帝国の大臣たちが集まる場所であり、ここで帝国の重要な決定が下されたとされています。柱の一つ一つには繊細な装飾が施されており、その壮大さに圧倒されることでしょう。

これらの見どころを巡ることで、ペルセポリスの歴史的背景や文化の深さを実感することができます。ペルセポリスを訪れた際は、ぜひこれらのスポットをじっくりと観察し、その魅力を味わってください。

 

ペルセポリスを訪れる際の注意点

服装の注意点

イランでは、男女ともに適切な服装が求められます。
女性は頭を覆うスカーフと体のラインが出ないゆったりとした服装を着用する必要があります。
男性も短パンやタンクトップは避け、長ズボンとシャツを着用することが望ましいです。

現地の文化とマナー

イランは文化と伝統を大切にする国です。
訪問者は地元の習慣やマナーを尊重し、公共の場での行動に注意を払うことが重要です。

安全情報と注意事項

イランは比較的安全な国ですが、政治的な情勢や地域ごとの状況によっては注意が必要です。
旅行前に最新の安全情報を確認し、現地での注意事項を遵守してください。

 

世界遺産検定公式過去問集(3級)からの例題

Q1.「ペルセポリス」に関する以下の文中の語句で、正しいものはどれか？

「ペルセポリス」は（1. アケメネス朝ペルシア）全盛期に（2. ラリベラ）が建設をはじめた年である。壮大な都市群が立ち並び、玉座殿の入り口には（3. ユダヤ教）の最高神のレリーフがある。帝国は繁栄を誇ったが、前330年前に（4. チンギス・ハン）によって滅ぼされ、ベルセルポリスも炎上して廃墟となった。　
引用元: 世界遺産検定公式過去問集（p32,2018年6月世界遺産検定3級より）

1. アケメネス朝ペルシア
2. ラリベラ
3. ユダヤ教
4. チンギス・ハン

 

ペルセポリスのお話はいかがでしたか？
世界遺産検定の過去問は、どれも有名な出来事や人物が取り上げられ難しかったのではないでしょうか？
中東の歴史ある大国イランのペルセポリス、世界情勢的に気軽に旅行で訪れることができるのは、まだ先なのかもしれません。
現代へと続く歴史の転換期を物語る遺跡、遠い地域の遠い時代を思い浮かべながら、覚えておきたいですね。

 

 

ペルセポリスのまとめ