中央アメリカに位置するグアテマラ共和国、その北部には、マヤ文明の壮大な遺跡が広がるティカル国立公園があります。この世界遺産は、豊かな自然と歴史的価値を兼ね備えた複合遺産として、世界中から訪れる観光客を魅了しています。
しかし、ティカル国立公園が注目を集める理由は、それだけではありません。実は、この古代遺跡は、あの伝説的な映画「スターウォーズ」のロケ地としても知られているのです。
本記事では、ティカル国立公園の歴史と自然、そしてスターウォーズとの意外な関係性に迫りながら、この場所がいかにして文化とエンターテインメントの交差点となったのかを探っていきます。歴史と映画のファンにとって、ティカル国立公園は特別な意味を持つ場所であり、訪れる価値がある理由をお伝えします。
ティカル国立公園の歴史的・文化的な価値
ティカル国立公園の訪れ方と観光ポイント
スターウォーズのシーンとティカル遺跡の関係性
ティカル国立公園が世界遺産になった理由とスターウォーズ
常夏の南米グアテマラは、中央アメリカの南にあるコーヒーの産地として有名な国です。
グアテマラには、歴史的に貴重なマヤ文明の遺跡が残されており、ティカル国立公園は世界遺産の中でも特に貴重とされる複合遺産に登録されています。
登録区分)複合遺産
登録年)1979年
登録基準)(1), (3), (4), (9), (10)
登録国)グアテマラ
登録地域)中央アメリカ
グアテマラ北部の平原地帯、ペテン低地にあったマヤ文明の大都市ティカルは3世紀から9世紀にかけてのマヤ文明の建築物を今に残す歴史的に重要な遺跡です。
一方、熱帯地域特有の生き物の営みも希少とされ、文化遺産と自然遺産の両方の登録基準で高い評価を受け、複合遺産として登録されています。
ティカル国立公園と複合遺産の条件
ティカルの都市はマヤ文明の政治、経済中心地として紀元4世紀から9世紀ごろにかけて繁栄を極めたとされています。
マヤ文明の歴史は、紀元前2000年から西暦250年の先古典期、西暦250年から950年までの古典期、西暦950年から1539年までの後古典期と1500年代以降の植民地期に分けられています。
ティカル国立公園に残る遺跡は、西暦250年から950年までの古典期マヤ文明の時代に築かれた遺跡であると現地の石碑に残されています。
ティカル国立公園がスターウォーズのロケ地に選ばれた理由
ティカル国立公園がスターウォーズのロケ地に選ばれた背景には、映画の壮大なスケールと古代の神秘的な雰囲気を求める監督や制作チームの意図が大きく影響しています。
スターウォーズの監督であるジョージ・ルーカスは、銀河系の冒険物語を描くにあたり、リアリティと異世界感のバランスを重視していました。
彼が探していたのは、現実の地球上にありながらも、観客にとってまるで未知の惑星にいるかのような感覚を与える場所でした。
ティカル国立公園の広大なジャングルと、古代マヤ文明の壮大なピラミッドが立ち並ぶ風景は、まさにその条件にぴったりだったのです。
特に、ティカルの遺跡群は、歴史的価値と独特な建築スタイルを持ちながらも、多くの観光地に比べて当時はまだ広く知られていなかったため、観客に新鮮な驚きを与えることができる場所でした。
さらに、グアテマラのロケーションは、映画制作においても重要な要素でした。
ティカル国立公園の自然環境は、ルーカスが描きたかった「自然と文明の融合」を表現するのに最適でした。地球の豊かな生態系を舞台に、異星の文化が共存する様子を描くことで、映画の世界観を強化する狙いがあったのです。
また、撮影許可を得るための手続きが比較的スムーズであったことも、ティカルがロケ地に選ばれた理由の一つです。グアテマラ政府は、ティカル国立公園が国際的に知られる機会になると判断し、積極的に協力したとされています。
「アキラ、ティカル国立公園が『スターウォーズ』のロケ地だったって知ってた?」
「もちろんさ!あの壮大なピラミッドとジャングルが、映画の中でヤヴィン4の基地として登場したんだ。まさに歴史と映画が交差する場所だよね。」
「まさか古代遺跡が宇宙の冒険と繋がるなんて、なんだか不思議な感じがするわ。」
ティカル国立公園の地理と歴史
ティカル国立公園は、グアテマラの最北部に位置し国土の1/3を占める面積のペテン県にある国立公園です。カリブ海に突き出たユカタン半島の付け根に位置する平原地帯に広がり、北東側でメキシコ、西側はベリーズに接しています。
温暖なグアテマラの平原地帯は、紀元前の頃から人が集まる地域でもありました。ティカルに集落ができたのは、紀元前800年ごろとされ、1世紀までには現在の街の面積に近い集落が築かれ、ピラミッドが作られたとされています。
マヤ文明を治める王朝は、時代によって変化しますが、ティカル国立公園の遺跡を築いた政権は「ティカルの王朝」と呼ばれる長期間続いた政権です。ティカルの王朝は、西暦378年にティカル一帯に政治的な中心都市を発展させ、6世紀頃まで安定した政権を築きます。
その後、562年から100年にわたり北のカラクムルの勢力にティカル一帯を制圧されたことで、記録と都市の発展が途絶える暗黒時代が訪れます。682年には、26代目のティカルの王朝が再び勢力を取り戻したことで、8世紀かけて最盛期を迎えた都市の人口は9万人を越え、中南米一帯に勢力の拡大を繰り返したとされています。
古典期後期最大の建築物4号神殿(高さ65m)や6号神殿は、この時期に建設されています。9世紀にはいると、中央アメリカのマヤ文明の都市は衰退をはじめ、16世紀、この地域の大部分はスペインに征服され、列強の支配が1800年代まで続くことになります。
こうしたマヤ文明の歴史は、建築物とともに残された石碑に刻まれています。
ティカル国立公園とスターウォーズ:観光客にとっての魅力
ティカル国立公園は、スターウォーズファンにとって特別な観光地として知られています。なぜなら、ここは映画『スターウォーズ エピソード4/新たなる希望』で反乱同盟軍の秘密基地「ヤヴィン4」として登場した場所だからです。
この映画のシーンが印象的なファンにとって、ティカル国立公園を訪れることは、まるで銀河の彼方に自分自身が足を踏み入れるような体験を味わえる絶好の機会です。
ティカル国立公園には、実際に映画の撮影が行われた遺跡が点在しており、その中でも特に有名なのが「4号神殿」です。この神殿に登ると、スターウォーズのシーンに登場した風景が目の前に広がり、映画の一場面に自分が立っているような感覚を楽しむことができます。
また、ティカル国立公園の広大なジャングルや神秘的な遺跡群を巡ることで、自然と歴史が織りなす壮大なスケールを実感できるのも大きな魅力です。
さらに、現地ではスターウォーズに関連するガイドツアーが提供されており、映画ファンに向けた特別な体験が用意されています。ガイドの説明を聞きながら、映画のシーンを再現したり、ロケ地の裏話を楽しんだりすることで、映画への愛着がさらに深まるでしょう。
ティカル国立公園は、ただの観光地以上に、映画ファンにとっての聖地ともいえる場所です。ここを訪れることで、スターウォーズの世界観をリアルに感じ、忘れられない思い出を作ることができるでしょう。
「ティカルの遺跡を見た時、ルーカスはきっとここがぴったりだと直感したんだろうね。」
「自然と文明が交差する場所なんて、まさに映画のテーマそのものだもの。現地に行ったら、映画のワンシーンが頭に浮かんでくるわね。」
「そうだね。映画ファンなら一度は訪れてみたい場所だよ。」
複合遺産で求められる登録基準
複合遺産とは世界遺産の中でも、登録の際に高い評価を受けています。2023年の登録が行われた10月現在、世界遺産は1199件に上り、文化遺産は933件、自然遺産は227件、その中で複合遺産はわずか39件でした。
それぞれの割合は、文化遺産77.8%、自然遺産18.9%、複合遺産3.2%と複合遺産が希少なことは明らかです。世界遺産は、UNESCOの定めた10項目の登録基準に基づいて審査が行われます。
10項目の中で、1〜6項目までは文化遺産の登録基準で、建造物・遺跡の歴史的・文化的・普遍的・芸術的・学術的価値が評価に影響を受けます。
7〜10項目までが自然遺産の登録基準で、風景の美しさよりも、生態系や自然現象の希少さと、申請国の環境保護の状況を重視した審査が行われます。さらに複合遺産に選ばれるためには、文化遺産と自然遺産両方の基準を満たす必要があります。
世界遺産の中でも、僅か3%という少なさには、申請そのものが難しいためといえます。
文化遺産としてのティカル国立公園の価値
ティカル国立公園で文化遺産に登録されているのは、「神殿」と呼ばれる階段ピラミッドの建築物です。建造された順番で番号が割り振られ、現存する遺跡は都市の最盛期とされる8世紀に集中しています。
最も有名な神殿は、ティカルの中央部にある1号神殿で734年に建築されたことが石碑に残されています。高さ51メートルのピラミッド状の建築物で、特徴的な彫刻から「大ジャガーの神殿」と呼ばれています。
ティカルの中央部には、同じ時代に建設された2号神殿もそびえ、2つの神殿の南北に中央アクロポリスと北アクロポリスがあり、多数の建築物が集中していることから、宗教的な中心地であったことが伺えます。
自然遺産としてのティカル国立公園の価値
赤道一帯に広がるティカル国立公園は、湿地、サバナと熱帯広葉樹林、ヤシ林などの広大な森林地帯です。ジャンルには熱帯地域特有の寄生植物や地上のラン科、パイナップル科の植物が特に希少価値が高いとされています。
動物も熱帯地域特有のジャガーやピューマ、中南米にしか生息していないオセロットやマーゲイ、ジャガランディなど樹の上で生活する5種のネコ科の動物が確認されています。
他にも、ユカタン半島固有のヒョウモンシチメンチョウ、猛禽類の中でもひときわ鮮やかなアカエリクマタカ、オオホウカンチョウなど絶滅危惧種を含む300種以上の鳥類も生息しています。
温暖な気候、標高差のあるグアテマラの自然が生んだ熱帯特有の豊かな生態系があることは、複合遺産としての評価を受けた大きな理由でもあります。
グアテマラのティカル国立公園とスターウォーズの関連
グアテマラのティカル国立公園は、スターウォーズのファンにとって特別な場所です。映画『スターウォーズ エピソード4/新たなる希望』で反乱同盟軍の秘密基地「ヤヴィン4」のロケ地として使用されたことで、この古代遺跡は銀河の冒険物語と結びついています。
ティカルの壮大なピラミッドとジャングルの風景は、映画に登場する未知の惑星のような雰囲気を完璧に再現しており、スターウォーズの世界観をリアルに感じることができる場所です。
このような背景から、ティカル国立公園は映画ファンにとって一度は訪れてみたい聖地となっています。
スターウォーズの名シーンとティカル国立公園のロケ地探訪
ティカル国立公園は、スターウォーズの中で反乱同盟軍の秘密基地が置かれていた「ヤヴィン4」のロケ地として知られています。具体的には、シリーズ第1作目『スターウォーズ エピソード4/新たなる希望』の終盤で登場するシーンが、ティカルで撮影されました。
このシーンでは、ヤヴィン4のジャングルに隠された反乱軍基地が描かれ、ルーク・スカイウォーカーたちがデス・スターへの攻撃を準備する場面が印象的に映し出されています。
映画の中でティカルが象徴的に使われているのは、巨大なマヤのピラミッドが反乱軍の秘密基地の一部として描かれていることです。
これにより、映画における反乱軍の基地は、ただの建物ではなく、古代の遺産と自然が融合した神秘的な場所として観客の記憶に残るものとなりました。
実際にティカル国立公園を訪れると、スターウォーズの撮影が行われた場所を巡ることができます。特に注目すべきは「1号神殿」や「4号神殿」といった遺跡群です。
これらの神殿は、映画の中で基地の一部として映し出された場所で、実際に現地を訪れると、その圧倒的なスケールに感動することでしょう。遺跡の上から見渡すと、映画のシーンが頭の中によみがえり、まるで自分が反乱軍の一員になったかのような感覚を味わうことができます。
また、ティカル国立公園には、スターウォーズファンが集まるツアーも存在し、映画の舞台を実際に体験できる貴重な機会を提供しています。
このように、映画の名シーンとティカルのリアルな風景が交わる瞬間を楽しむことで、スターウォーズの世界にさらに没入できること間違いありません。
参照公式サイト: Tikal National Park – UNESCO World Heritage Centre
世界遺産検定公式過去問集(4級)からの例題
Q1.登録基準の説明として正しくないものはどれでしょうか?
1.登録基準はひとつ以上当てはまればよい
2.登録基準は世界遺産の価値を示している
3.文化遺産と自然遺産の両方の登録基準にまたがるものが複合遺産である
4.登録基準は25項目からなる引用元: 世界遺産検定公式過去問集(p98,2018年12月世界遺産検定4級)
ティカル国立公園のお話はいかがでしたか?
アメリカ大陸の古代文明では、ナスカの地上絵を描いたアンデス文明やインカ帝国など南アメリカンの文明が有名ですよね。
中央アメリカでも、現代で高い評価を受ける遺跡を建築し、地域の歴史を築いたマヤ文明が繁栄していたことを、世界遺産とともに覚えておきたいですよね。
「この記事を読んでると、ますますティカルに行きたくなっちゃった!」
「歴史と映画、両方の魅力を一度に味わえるなんて、最高の旅先だよね。次の旅行先はここに決まりだ。」
「間違いないわね。楽しみが増えたわ!」