ヴィルンガ国立公園は、アフリカのコンゴ民主共和国に位置し、豊かな自然と生物多様性を誇る世界遺産です。この公園は、広大な熱帯雨林と開けた草原が広がるユニークな生態系を有し、世界でも数少ないマウンテンゴリラの生息地としても知られています。
しかし、その素晴らしい自然環境は、人類による環境破壊や地域の紛争、密猟など多くの脅威にさらされており、1994年に危機遺産として登録されました。
ヴィルンガ国立公園は、自然保護活動と共に、地域社会との共存が大きな課題となっています。この記事では、公園が抱える危機的な状況や、マウンテンゴリラをはじめとする希少種の保護活動の現状、そして観光を通じた持続可能な発展に向けた取り組みについて詳しく見ていきます。
ヴィルンガ国立公園が危機遺産に登録された理由や背景について理解できる
マウンテンゴリラを含む希少動物の保護活動とその課題について理解できる
ヴィルンガ国立公園の観光とエコツーリズムの現状や課題について理解できる
公園の自然景観や多様な生態系が持つ世界的な価値について理解できる
ヴィルンガ国立公園の魅力とマウンテンゴリラの生息地の保護活動
地球上の陸地全体の20.4%を占めるアフリカ大陸には、今でも手つかずの自然が数多く残されている地域です。
中でもコンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園は、日本国内の都道府県がそのまま収まる規模の熱帯雨林にマウンテンゴリラが生息する世界の中でも希少な自然遺産です。
ヴィルンガ国立公園の基本情報
「アキラさん、ヴィルンガ国立公園ってかなり動物もいて危険って聞いたけど、行く価値はあると思う?」
「うん、確かに行くのは簡単じゃないけど、それだけに訪れる価値はあるよ!ただ、地元のガイドをしっかり雇って、観光ルートも事前に調べておくのが大事だね。特に夜の移動は避けたほうがいいかな。」
「そうだね、安全が第一だもんね。でも、マウンテンゴリラに会えるなんて、一生の思い出になりそう!」
登録区分)自然遺産,危機遺産登録
登録年)1979年
登録基準)(7), (8), (10)
登録国)コンゴ民主共和国
登録地域)アフリカ
アフリカ大陸中央部のコンゴ川流域に広ががるヴィルンガ国立公園は、アフリカ大陸で第2位の面積を誇る国立公園です。
鬱蒼とした熱帯雨林と、開けた草原が広がる植物の豊かな公園内には、ワシントン条約で保護の対象にもなっている最大の霊長類マウンテンゴリラも生息しています。
自然遺産の3つの基準の中で、「(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含み、科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地」として高い評価を受けた世界遺産でもあります。
ヴィルンガ国立公園の地理
ヴィルンガ国立公園は、赤道直下のコンゴ民主共和国北東部の北キヴ州、隣国のルワンダやウガンダの国境近くに広がる山林地帯です。
日本国内では、静岡県(7777.02km2)や宮崎県(7734.24km2) とほぼ同じ7800km2の面積の国立公園で、面積の3分の1が赤道の北側、3分の2が南側に位置し、まさに赤道直下といえる場所にあります。
また、アフリカ大陸を南北に縦断する巨大な谷 大地溝帯(だいちこうたい、グレート・リフト・バレー、Great Rift Valley)と赤道が交差する地域でもあり、標高4500m級のヴィルンガ山地からルウェンゾリ山地、さらにエドワード湖があり標高差と気候差のある地域でもあります。
赤道直下のコンゴ民主共和国北東部は、熱帯モンスーン気候にあてはまり、乾燥してほとんど雨が降らない乾季が6月から9月まで続き、年間降雨量が2000mmを越える雨季が10月から5月まで続きます。
雨が多い雨季は、期間中雨が続いていそうにも思えますが、短時間の豪雨と晴れ間を繰り返す気候のため、熱帯植物の過ごしやすい気候でもあります。
この気候が、ヴィルンガ国立公園がアマゾンに次ぐ広さの熱帯雨林を抱える理由でもあります。
ヴィルンガ国立公園の生態系
日本の都道府県の面積と同じ広さのヴィルンガ国立公園には、気候と植物の分布でおおよそ6〜7種類の草原や森林があります。
乾燥した樹木のない平原で短いイネ科等の草に覆われたステップ、乾季と雨季のある熱帯特有のイネ科の草の草原に樹木がまばらに生えるサバナ、乾燥する開けた平野、動物たちの水辺になる湿地、大型の動物の住処にもなる熱帯雨林で覆われた低地と山地森林があります。
まるで恐竜が現れそうな雰囲気のある木生シダ、地面には熱帯特有でロベリアの仲間の鮮やかな植物などが茂り、人や動物の手の届く範囲には背の高い草や低木で鬱蒼と覆われ、ビルほどの高さには大木がそびえるといった、まるで歓楽街のような多様な植物の生態系がみられます。
動物の種類も豊かで、哺乳類のマウンテンゴリラとカバはヴィルンガ国立公園を代表する大型哺乳類です。
ほかにも、ヒガシローランドゴリラ、チンパンジー、ゾウ、アフリカスイギュウ、コーブ、オカピ、ダイカーなどよ大型哺乳類が暮らしています。
ヴィルンガ国立公園の生物多様性と人の暮らし
ヴィルンガ国立公園に限らず、自然遺産として登録される地域には人の暮らしとの共存問題も抱えています。人が暮らす以上、必ず何かしらの産業が営まれています。
わかりやすい例では、発電や治水目的での大規模なダム建設や鉱山の開発のため元々の自然環境が破壊されることでしょう。
他にも、人が暮らすために欠かせない農業でも、本来の生態系に影響を与えることは少なくはありません。さらに、人ならではの問題、武力衝突も生物多様性との共存が危ぶまれます。
ルワンダやウガンダの国境近くにあるヴィルンガ国立公園は、まさにこの問題を抱えていました。
ヴィルンガ国立公園危機遺産の理由
ヴィルンガ国立公園のあるコンゴ民主共和国は、1960年代のコンゴ動乱を経て植民地支配を続けていたベルギーからコンゴ共和国として独立、その直後に軍事クーデターによって1997年までザイール共和国と呼ばれる独裁政権が続きます。
1997年に独裁政権が倒され現在の国名になった後2003年まで、2度の内戦を経験しています。内戦や軍事クーデターは、第二次大戦前後のアフリカ全体で現代まで続く問題で、隣国のルワンダでも1990年から1993年までの間、民族対立と宗教対立を背景とした大規模な「ルワンダ紛争」が起こります。
ヴィルンガ国立公園には、ルワンダ紛争をさから逃れる難民の大量流入、敗退した兵士の暴力のよって環境の悪化が進みます。
ルワンダ紛争から敗退した兵士の中には、マウンテンゴリラやカバに対して暴力を向ける者も現れ、25000頭以上いたとされるカバのうち1万頭以上、全世界の生息数の約半分に当たる約300頭のマウンテンゴリラが虐殺された事件が起こります。
そのため、ヴィルンガ国立公園は1994年に危機遺産(危機にさらされている世界遺産リストへ)として登録されることになります。
マウンテンゴリラの保護とヴィルンガ国立公園の自然遺産の価値
世界遺産検定公式過去問集(4級)からの例題クイズ!
2018年前後でのヴィルンガ国立公園の出題はありませんので作成しました。ぜひ挑戦してみてください
クイズ 1:ヴィルンガ国立公園が設立されたのはいつですか?
A) 1925年
B) 1950年
C) 1960年
D) 1979年
解説: ヴィルンガ国立公園は、1925年にアフリカで最初の国立公園として設立されました。当時は「アルバート国立公園」と呼ばれ、特にマウンテンゴリラの保護を目的としていました。
クイズ 2:ヴィルンガ国立公園が危機遺産に登録された主な理由は次のうちどれですか?
A) 地震の頻発
B) 大規模な森林火災
C) 紛争や密猟による環境破壊
D) 過剰な観光客の訪問
解説: ヴィルンガ国立公園は、1994年に危機遺産に登録されました。主な理由は、紛争による環境破壊やマウンテンゴリラなどの野生動物に対する密猟が急増したためです。
クイズ 3:ヴィルンガ国立公園が世界遺産に登録された基準に含まれていないものはどれですか?
A) 自然美
B) 進化の証拠
C) 絶滅危惧種の保護
D) 人類の文化的進歩の証拠
解説: ヴィルンガ国立公園は、自然美(基準7)、進化の証拠(基準8)、絶滅危惧種の保護(基準10)で評価され、世界遺産に登録されています。しかし、「人類の文化的進歩の証拠」は登録基準には含まれていません。
ヴィルンガ国立公園のお話はいかがでしたか?世界遺産検定の2018年の過去問に出題はありませんが、文化遺産に限らず自然遺産の中にも危機遺産として登録されているものもあります。
遠い日本で暮らす私たちにできることは限られていますが、まずは知ることが大切なのではないでしょうか?
「アキラさん、ヴィルンガ国立公園って、まだまだ大変な状況なんだね。未来はどうなるんだろう?」
「そうだね、でも希望はあるよ。エコツーリズムや国際的な保護支援が増えているし、何より地元の人たちが公園を守ろうとしているんだ。僕たちも意識して支援していけるよ。」
「確かに、小さな行動が大きな結果につながるんだよね。行ってみて、もっと公園のことを学びたくなったよ!」
ヴィルンガ国立公園の危機遺産登録理由とゴリラ保護対策の現状とはのまとめ
- ヴィルンガ国立公園はコンゴ民主共和国に位置する
- アフリカ最古の国立公園として1925年に設立された
- 世界でも数少ないマウンテンゴリラの生息地として有名
- 1994年に危機遺産に登録された
- ルワンダ紛争が公園の環境破壊に影響を与えた
- 内戦や密猟が公園の生態系に大きな打撃を与えた
- 現在でも違法伐採や密猟の脅威が続いている
- マウンテンゴリラ保護活動が行われている
- 観光収入が保護活動の重要な資金源となっている
- 公園は7800平方キロメートルの広さを誇る
- エコツーリズムが推進されている
- 熱帯雨林や火山など多様な自然景観が広がる
- 活火山ニーラゴンゴ山も観光スポットである
- ヴィルンガ国立公園は石油開発の脅威にも直面している
- 世界遺産検定に出題される可能性が高い