世界遺産はその地域の歴史的・文化的価値だけでなく、国際的な基準に基づいて厳正に審査されます。
本記事では、世界遺産がどのように決まるのか、その登録の流れを詳しく解説します。
また、関連する国際機関と世界遺産条約についても触れ、世界遺産検定に出題される内容を分かりやすくまとめました。
世界遺産の登録プロセスや審査基準を理解することで、世界遺産の重要性とその保護の必要性を再認識しましょう。
世界遺産条約の概要と批准国
登録に関わる国際機関の役割
文化遺産と自然遺産の審査基準
- 世界遺産の登録の流れ・世界遺産検定にも出題
- 世界遺産を決めるのは世界遺産委員会
- 世界遺産の登録の流れ
- 世界遺産条約
- 世界遺産の候補選定から登録に携わる機関
- ユネスコ世界遺産センター(UNESCO World Heritage Center)
- 世界遺産委員会 (World Heritage Committee)
- 国際記念物遺跡会議(ICOMOS:International Council on Monuments and Sites)
- 国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)
- CCROM評議会(International Center for the Study of Preservation and Restoration of Cultural Property)
- 世界遺産検定の例題
- 世界遺産の登録の流れまとめ
世界遺産の登録の流れ・世界遺産検定にも出題
毎年、日本の建築物や自然の景観が世界遺産に登録されたかが話題になります。世界遺産は、地域の歴史や価値だけではなく、国際的な基準を元に厳正に審査が行われています。
今回は、世界遺産に関する国際機関と世界遺産条約についてまとめていきます。
「先生、世界遺産ってただ歴史的に価値があるだけじゃ登録されないんですよね?」
「その通りだよ、ユウ。世界遺産は、ただ価値があるだけでなく、国際的な基準を満たしているかどうかが厳しく審査されるんだ。その流れをこれから詳しく見ていこう。」
世界遺産を決めるのは世界遺産委員会
世界遺産は、各国からの申請を世界遺産条約に基づいて世界遺産委員会で審査が行われます。
世界遺産の登録の流れ
国内で候補にあげられた世界遺産が申請されてから登録されるまでには、まず世界遺産条約を批准しなければなりません。
世界遺産条約を批准してからの流れは、次のようになっています。
- 各国政府が国内の世界遺産候補をユネスコ世界遺産センターへ提出
- ユネスコ世界遺産センターが専門組織へ推薦書の調査を依頼
- 文化遺産は国際記念物遺跡会議、自然遺産は国際自然保護連合が現地調査
- ユネスコ世界遺産センターへ結果を報告
- 世界遺産委員会で審議
- 各国へ通達
文化遺産、自然遺産のどちらも審査は厳格とされています。
世界遺産候補の価値に加えて、各国での保護が具体的に行われているかも審査内容に含まれています。
世界遺産条約
世界遺産条約は、1972年11月16日に採択され2022年5月現在194か国が批准する国際条約です。
世界遺産条約の目的は、「文化遺産及び自然遺産を全人類のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立すること」とされ、日本は1992年 9月30日に国内の法律の整備に取り掛かりました。
全38の条文の中で、世界遺産を決める基準は第8条に記載された世界遺産委員会で1年に1回審査が行われるとされています。
具体的な基準は、世界遺産委員会が定める「世界遺産条約履行のための作業指針」の中に詳細に示されています。
国際的な基準の他、世界遺産候補について申請国で保護措置が十分採られているか等も判断基準となっています。
世界遺産の候補選定から登録に携わる機関
「世界遺産の登録には、どんな国際機関が関わっているんですか?」
「いい質問だね。ユネスコ世界遺産センターを中心に、文化遺産には国際記念物遺跡会議(ICOMOS)、自然遺産には国際自然保護連合(IUCN)といった組織が関わっているんだ。それぞれの役割を見てみよう。」
- ユネスコ世界遺産センター(UNESCO World Heritage Center): 世界遺産委員会開催のための事務作業、締約国への技術・情報提供、世界遺産基金の運用など
- 世界遺産委員会(World Heritage Committee): 世界遺産の登録審査を行う
- 国際記念物遺跡会議(ICOMOS): 文化遺産の現地調査と報告
- 国際自然保護連合(IUCN): 自然遺産の現地調査と報告
- CCROM評議会: 文化財の保全と修復のための国際的な研究機関
ユネスコ世界遺産センター(UNESCO World Heritage Center)
所属)国際連合
設立)1992年
本部)フランス パリ
ユネスコ世界遺産センターは、世界遺産委員会開催のための事務作業や、締約国への技術・情報提供、世界遺産基金の運用など世界遺産に関する運営全般を担う組織です。
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ、英: United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)の中の組織のため、国際連合の下部組織として位置づけられています。
世界遺産委員会 (World Heritage Committee)
所属)ユネスコ
設立)1977年6月27日
本部)フランス パリ
世界遺産の登録に欠かせない審査を行う機関が、世界遺産委員会です。
1年に1回、世界各国で開催され、世界遺産の審査の他、世界遺産リストに登録された物件の保全状況を確認しています。
国際記念物遺跡会議(ICOMOS:International Council on Monuments and Sites)
所属)ユネスコ
設立)1965年
本部)イタリア ヴェネツィア
国際記念物遺跡会議は、元々は世界の歴史的な建築物を保全するために生まれた組織でした。
世界遺産条約が各国で批准されてからは、文化遺産に関する現地調査を行い、建築物の保全について世界遺産委員会に報告を行っています。
国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)
所属)国際非政府組織(INGO)
設立)1948年
本部)スイス グラン
国際自然保護連合は、世界各地の保護区や天然記念物の環境保護を目的に活動する国際的なNGO団体です。
世界遺産条約では、自然遺産を調査する役割を担い、申請された地域が人の手が加えられていない原生地域であるかを現地に赴いて調査しています。
CCROM評議会(International Center for the Study of Preservation and Restoration of Cultural Property)
所属)ユネスコ
設立)1959年
本部)イタリア ローマ
CCROM評議会は、歴史的な文化財の保全と修復のための国際的な研究機関です。
世界遺産の中でも歴史的な建築物の修復の助言や技術的な支援を行っています。
世界遺産検定の例題
今回の世界遺産の申請から登録までの問題は、解答が決まっているため覚えやすい問題ではないでしょうか?
それでは、世界遺産検定4級と3級の例題を紹介させていただきます。
Q1.世界遺産条約の理念誕生のきっかけとなった、1960年にエジプトで起こった出来事とは何でしょうか。(世界遺産検定4級)
1.アラビア・オリックスの保護運動
2.エッフェル塔の解体
3.アスワン・ハイ・ダムの建設
4.ギザの三大ピラミッドの発見
Q2.「ユネスコ」の正式名称として、正しいものはどれか。(世界遺産検定3級)
1.国際連合児童保護基金
2.国際連合教育科学文化機関
3.世界保健機関
4.国際開発協会
世界遺産は、各国から申請された世界遺産候補について、ユネスコ世界遺産センターから専門機関へ調査の依頼が行われます。
文化遺産は国際記念物遺跡会議、自然遺産は国際自然保護連合が条約に基づいて現地調査を行い、調査結果を元に世界遺産委員会が登録の審査を行っています。
世界遺産に関する国際機関と世界遺産条約は、世界遺産検定でも回答しやすい暗記問題でもあるため、それぞれの単語の違いを覚えておきたいものですね。
「先生、これで世界遺産がどうやって決まるのか、よく分かりました!まさに国際的な努力の結晶なんですね。」
「そうだね、ユウ。世界遺産は、私たち全員が守り、次世代に伝えていくべき宝物なんだよ。これからも興味を持って学んでいってほしいな。」