奄美大島と徳之島、沖縄北部世界遺産の登録理由と範囲、絶滅危惧種の詳細

鹿児島県と沖縄県にまたがる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、2021年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。
この地域は、日本国内で「白神山地」「知床」「小笠原諸島」に続く四つ目の自然遺産として、その独自の生態系と豊かな自然環境が評価されています。

この記事では、奄美大島と徳之島、沖縄島北部、西表島の各地域の自然の魅力、世界遺産登録の理由と範囲、そして絶滅危惧種について詳しく解説します。

奄美大島と徳之島の世界遺産登録理由とその背景

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、鹿児島県から沖縄県にまたがる自然遺産です。日本国内では、「白神山地」」「知床」「小笠原諸島」の3つに加え2021年に登録された自然遺産です。

ユウ：旅行や歴史に興味を持つ大学生

 「先生、この地域が世界自然遺産に登録された理由って何ですか？自然遺産として特別な理由があるんでしょうか？」

世界遺産に詳しい博士

「そうですね、ユウさん。奄美大島や徳之島は、独自の生態系と多様な生物種が生息している点で非常に特別なんです。他の地域では見られない固有種が多く、これらの生物が進化してきた過程や生態系の重要性が評価されて、世界自然遺産に登録されました。」

鹿児島県に位置する「奄美大島」と「徳之島」は、国内最大規模の亜熱帯照葉樹の森に覆われた大自然の島々です。
年間降水量約3000ミリメートルという非常に湿潤な気候が、これらの島々に独自の生態系を育んできました。
この美しい自然環境は、大陸との結合・分離を繰り返しながら、多くの固有種を育て、生態学者や自然愛好家にとって夢のような場所とされています。
この記事では、奄美大島と徳之島の自然の魅力、文化、そして世界遺産としての価値について詳しくご紹介します。

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」には、鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄本島北部と西表島の4つの地域が登録されています。

ユネスコで高い評価を受けた「１０．生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの」では、地域だけではなく、地域に生きる生き物たちそのものが世界的に価値があると判断されたことに他なりません。

奄美大島の亜熱帯照葉樹林（AI生成のため正確なイラストではありません。イメージとして捉えてください）

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の評価の理由

世界遺産の中でも、自然遺産に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」。

文化遺産に比べ自然遺産の登録数が少ない理由、そして東洋のガラパゴスと呼ばれる地域の自然に迫らせていただきます。

奄美大島と徳之島の世界遺産登録の理由

奄美大島と徳之島の世界遺産登録の理由は、これらの地域が持つ独自の生態系と多様な生物種にあります。奄美大島と徳之島は、年間降水量が多く、湿潤な気候が独自の生態系を育んできました。これにより、他の地域では見られない固有種が数多く存在しています。例えば、奄美大島にはアマミノクロウサギやルリカケスなどが生息しており、徳之島ではトクノシマテンナンショウやアマミエビネなどの植物が見られます。これらの生物種は、進化の過程で独自の特性を持ち、科学的にも非常に貴重です。

さらに、これらの地域は自然保護活動が積極的に行われており、生態系の維持と保護に努めています。特に、外来種の駆除や保護地域の設定などが進められており、これらの取り組みが世界遺産登録の評価を高める要因となりました。

世界遺産における奄美大島と徳之島の保護活動

世界遺産における奄美大島と徳之島の保護活動は、地域の生態系を維持し、絶滅危惧種を守るために非常に重要です。奄美大島では、アマミノクロウサギの保護を目的とした交通事故防止策が進められています。夜間における減速運転の呼びかけや、動物が道路に飛び出さないようにするためのフェンス設置などが行われています。また、希少植物の盗掘を防ぐためのパトロールも実施されています。

徳之島でも同様に、固有種の保護が進められており、特にトクノシマテンナンショウなどの希少植物に対する保護活動が強化されています。外来種の駆除活動も行われており、これにより地域の生態系が保たれています。さらに、環境教育プログラムを通じて地域住民の環境意識を高める取り組みも進められています。

これらの保護活動は、地域の自然環境を未来の世代に引き継ぐために欠かせないものです。地域住民や観光客が自然と共生する意識を持ち、自然保護に協力することが求められています。

日本国内に登録数が少ない自然遺産

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」も含め、日本国内の自然遺産は4件のみの登録です。

日本国内では、なぜ登録件数が少ないのでしょうか？

自然遺産（英:natural heritage）は、生き物を含めた自然の風景、生き物を含め地域で、保存的・学術的・普遍的な価値があるものと定められています。
世界遺産条約第2条に記載され、海外も含め登録されている世界遺産の1割が自然遺産に分類されています。

自然遺産は文化遺産とは別に次の4つの基準で登録の審査が行われ、さらに8種類の保護の状況が審査に大きく影響します。

７．ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの

８．地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの

９．陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において重要な生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの

１０．生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの

Ia（厳正保護地域）、Ib（原生自然地域）、II（国立公園）、III（天然記念物）、IV（種と生息地管理地域）、V（景観保護地域）、VI（資源保護地域）、どれにも分類できないカテゴリー

自然遺産として登録されるためには、風景の美しさよりも、生き物や自然現象の希少さと、申請国の保護の状況が重視されています。

特に日本のように、国土の中でも居住地の多い地域では、どうしても保護の状況の点で不利になってしまうことは確かでしょう。

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部と西表島の自然と気候

ユウ：旅行や歴史に興味を持つ大学生

「それにしても、どうして日本の自然遺産って少ないんでしょうか？日本には美しい自然がたくさんあるのに。」

世界遺産に詳しい博士

「それは良い質問ですね。日本は自然豊かな国ですが、自然遺産として登録されるためには、その地域が持つ生態系の希少性や保護状況が厳しく評価されます。特に、保護が十分に行われていることが重要で、日本では都市開発などの影響で、保護が難しい地域が多いことが一因です。」

鹿児島県奄美群島の奄美大島は、鹿児島市と沖縄本島のほぼ中間に位置しています。
気候は年間を通し気温の変化が少ない亜熱帯性気候にあたり、国際的な気候区分では南日本気候に含まれています。

地域の天気の特徴に、年間の日照時間が日本一短く、特に冬場は曇りがちが独特の特色があります。
奄美大島の面積は712.35 km2、東京都23区より広く、日本で面積の広さでは5位の離島でもあり、最高標高は694 m。

居住地以外では、亜熱帯照葉樹林が広がり日本では西表島に次ぎ第2位の広さのマングローブ林 （約71km2）が広がっています。

奄美大島と同じ奄美群島、ほぼ中央に位置しているのが徳之島です。
気候は奄美大島と同じく、亜熱帯性の南日本気候。
面積は247.77 km2で、奄美大島に次ぐ大きさです。

最高標高も奄美大島に次ぐ645mの広さですが、平地が多く奄美群島の中では最大の耕地面積をほこります。
徳之島は太古のサンゴ礁が起源の石灰岩性のカルスト地形と呼ばれ、海蝕と呼ばれる独特な海岸線が特徴的です。
手付かずの照葉樹林は、自然の豊かさを物語っています。

西表島は、沖縄本島の南、石垣島や与那国島と同じ沖縄県八重山列島に含まれています。
気候は亜熱帯海洋性気候、国際的な気候区分では熱帯雨林気候(Af)にあたります。

面積は289.61 km2と、沖縄県内では沖縄本島に次いぐ第2位の広さを持つ島です。
最高標高は469.5 mで、切り立った山や森林が海岸近くまで迫っているのが特徴的です。
県内最長の浦内川が流れ、熱帯雨林が広がる日本国内では珍しい自然環境でもあります。

沖縄県の沖縄本島は、面積1,207.00 km2の内、北部の面積764km2が自然遺産に登録されています。
気候は亜熱帯性気候の温暖湿潤気候 (Cfa)に分類され、都市開発が進んだ中部・南部に比べ、県内でも森林が多く残る地域です。

沖縄島北部の世界遺産登録範囲とその理由

沖縄島北部の世界遺産登録範囲とその理由について説明します。沖縄島北部、特にやんばる地域は、豊かな生態系と多様な動植物が特徴です。この地域は、日本国内でも特に高い生物多様性を誇り、多くの絶滅危惧種が生息しています。例えば、ヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネなど、ここでしか見られない固有種が数多く存在します。

やんばる地域の自然環境は、亜熱帯性気候によって育まれた常緑広葉樹林が広がり、湿潤な気候が多様な生物の生息地となっています。このため、世界的にも珍しい生態系が維持されています。また、地域住民と行政が協力して行う保護活動や、環境教育の取り組みも評価されています。これらの要素が、沖縄島北部が世界遺産に登録された大きな理由です。

徳之島の美しい海岸線と珊瑚礁（AI生成のため正確なイラストではありません。イメージとして捉えてください）

沖縄北部と西表島の自然環境とその価値

沖縄北部と西表島の自然環境とその価値は、日本国内でも特に貴重です。沖縄北部、特にやんばる地域は、常緑広葉樹林が広がる豊かな生態系を持ち、多様な動植物が生息しています。この地域には、ヤンバルクイナやリュウキュウヤマガメなど、ここでしか見られない希少な生物が数多く存在し、その多様性は世界的にも評価されています。

西表島は、亜熱帯性気候によって育まれた熱帯雨林が広がり、イリオモテヤマネコをはじめとする多くの絶滅危惧種が生息しています。島全体が自然保護地域に指定されており、その豊かな自然環境は観光資源としても重要です。西表島には、マングローブ林やサンゴ礁が広がり、陸上だけでなく海洋生態系も豊かです。このような多様な生態系が共存する地域は、世界的にも珍しく、その保護と持続可能な利用が求められています。

これらの地域の自然環境は、観光客にとっても大きな魅力となっており、自然体験やエコツアーが人気です。しかし、観光の影響で自然環境が損なわれないよう、適切な管理と保護活動が重要です。地域社会と観光業が協力し、自然を守りながらその魅力を伝える取り組みが続けられています。

やんばるの森に生息するヤンバルクイナ（AI生成のため正確なイラストではありません。イメージとして捉えてください）

地域特有の生態系

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」には、日本国内の特別天然記念物、世界的にもレッドリストに登録され見かけることそのものが貴重な生き物が暮らしています。

レッドリストでは、西表島のイリオモテヤマネコ、沖縄本島のヤンバルクイナ、リュウキュウヤマガメ、オキナワイシカワガエルが世界的にも希少とされています。

奄美大島と徳之島にはアマミノクロウサギ、沖縄本島と西表島にはヤンバルテナガコガネ、ヤシガニなど地域特有の動物が生息しています。

植物の中にも奄美大島で生きている化石とも呼ばれるヒカゲヘゴが茂る金作原（きんさくばる）原生林、徳之島ではコモチナナバケシダ、トクノシマテンナンショウ、タイワンアマクサシダが特別天然記念物に登録されています。

西表島は面積のうち、90%が亜熱帯の自然林に覆われ、発達した板根を持つサキシマスオウノキも分布しています。

ヤンバルクイナの住む沖縄本島北部は、山原（やんばる）と呼ばれる森林が自然の豊かさの象徴となっています。

奄美大島、徳之島、沖縄北部に生息する絶滅危惧種の詳細

奄美大島、徳之島、沖縄北部に生息する絶滅危惧種の詳細は、これらの地域が世界遺産に登録された理由の一つでもあります。奄美大島にはアマミノクロウサギやルリカケスなど、非常に希少な動物が生息しています。これらの動物は、他の地域では見られない固有種であり、その保護が非常に重要です。徳之島ではトクノシマテンナンショウやアマミエビネなどの植物が特別天然記念物に指定されています。これらの植物も、独自の進化を遂げた固有種であり、その生態は非常に興味深いものです。

沖縄北部のやんばる地域には、ヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネなどが生息しています。これらの動物もまた、非常に希少であり、その保護が求められています。特にヤンバルクイナは、飛べない鳥として知られ、その生態や生息地の保護が重要視されています。これらの絶滅危惧種の保護活動は、地域社会や環境保護団体の協力によって進められており、その努力が実を結んでいます。

絶滅危惧種の保護と地域社会の取り組み

絶滅危惧種の保護と地域社会の取り組みは、奄美大島、徳之島、沖縄北部、西表島において非常に重要なテーマです。これらの地域では、地域特有の希少な動植物が多く生息しており、その保護活動が積極的に行われています。

奄美大島では、アマミノクロウサギやルリカケスの保護活動が進められており、特に交通事故防止策として、夜間の減速運転や注意喚起の看板設置が行われています。また、盗掘や密猟を防ぐためのパトロールも実施されています。地域住民やボランティア団体が協力して、これらの活動を支えています。

徳之島では、トクノシマテンナンショウやアマミエビネなどの植物の保護活動が進められており、外来種の駆除や保護区の設定が行われています。これにより、生態系のバランスが保たれ、希少種の生息地が守られています。

沖縄北部や西表島でも、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコの保護活動が行われており、地域社会が一丸となって取り組んでいます。これには、環境教育プログラムの実施や観光業との連携が含まれます。観光客に対しても、自然環境の重要性や保護の必要性を訴える活動が行われており、地域全体で自然と共生する意識を高めています。

これらの取り組みは、地域の自然環境を未来の世代に引き継ぐために不可欠です。地域社会と協力して進められる保護活動は、世界遺産としての価値をさらに高める要因となっています。

奄美大島、徳之島、沖縄北部、西表島の観光スポットと見どころ

奄美大島、徳之島、沖縄北部、西表島の観光スポットと見どころは、自然の美しさと文化の豊かさが融合した魅力的な場所ばかりです。それぞれの地域で独自の観光スポットを楽しむことができます。

奄美大島は、金作原原生林が特に人気です。ここでは、亜熱帯の植物が生い茂る原生林を散策でき、珍しい動植物を観察することができます。また、奄美大島のマングローブカヌーツアーもおすすめです。広大なマングローブ林をカヌーで巡り、自然の中でリラックスできます。

徳之島では、犬田布岬が絶景ポイントとして有名です。透き通った海と青い空、そして広がる珊瑚礁が美しい風景を作り出しています。また、徳之島の亀徳では、ウミガメが産卵するビーチがあり、自然の神秘を感じることができます。

沖縄北部、特にやんばる地域は、大石林山が見どころです。ここは、沖縄で最も古い石灰岩が露出した場所で、独特の地形と植生を楽しめます。また、やんばる国立公園内には、トレッキングやバードウォッチングに最適なコースが多数あります。やんばるの森ビジターセンターも訪れる価値があります。

西表島では、浦内川クルーズが人気です。このクルーズでは、熱帯雨林を川から眺めることができ、自然の迫力を感じることができます。また、西表島の星砂の浜は、その名の通り星形の砂が見られるビーチで、シュノーケリングも楽しめます。さらに、ピナイサーラの滝へのトレッキングは、沖縄県内で最も高い滝を訪れる冒険的な体験です。

これらの観光スポットは、それぞれの地域の自然や文化を存分に楽しむことができる場所です。訪れる際には、環境保護に配慮しながら、美しい自然と触れ合ってください。

西表島の豊かなマングローブ森林（AI生成のため正確なイラストではありません。イメージとして捉えてください）

参照サイト： UNESCO World Heritage Centre

世界遺産検定公式過去問集(4級)の傾向

2018年実施の過去問の中には、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」に関する出題はありませんでした。

他の自然遺産の出題傾向では、「地域と生き物の組み合わせ」「地域特有の用語」が出題されやすいため、覚えておきたいですよね。

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」のお話はいかがでしたか？

鹿児島県から沖縄県にまたがり、東洋のガラパゴスと呼ばれる自然豊かな島々は、世界遺産への登録で世界的に高い評価を受けることになりました。

世界遺産検定では、用語の組み合わせが合っているか誤っているかを問う問題は出題されやすいため、それぞれの島と自然の特徴を抑えておきたいですよね。

ユウ：旅行や歴史に興味を持つ大学生

「この記事を読んで、実際に奄美大島や徳之島に行ってみたくなりました。現地でしか見られない生物たちを直接観察したいです。」

世界遺産に詳しい博士

「それは素晴らしいですね、ユウさん。現地を訪れることで、自然の偉大さやその保護の重要性を実感できるでしょう。ただし、観光の際には自然環境を守るためのマナーを守ることも忘れないでくださいね。」

奄美大島と徳之島の世界遺産登録理由とその背景まとめ