九州地方と中国地方の山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、東海地方の静岡県と東北地方の岩手県に点在する世界遺産をご存知でしょうか?
2015年に文化遺産として登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、日本の産業革命と呼ばれる工業の発展を現代に語り継ぐ貴重な遺産群です。
この遺産群は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての日本の急速な産業化を象徴するものであり、西洋からの技術導入と独自の発展を遂げた日本の近代化の過程を今に伝えています。
本記事では、これらの産業革命遺産がどのようにして世界遺産に登録されたのか、その理由や各地の詳細について詳しく解説します。
各遺産の歴史的背景とその重要性
長崎県にある特に注目すべき産業革命遺産の特徴
明治日本の産業革命遺産の具体的な登録時期とその経緯
なぜ明治日本の産業革命遺産は重要?その歴史と背景を徹底解説
先生、明治日本の産業革命遺産って、なぜそんなに重要視されているんですか?
いい質問ですね、ユウ。これらの遺産は、日本が近代国家へと成長する過程で、いかにして産業基盤を築いたかを示す重要な証拠だからなんです。特に、製鉄・製鋼、造船、石炭産業の発展が、日本の工業化と国際的な地位向上に大きく貢献したんですよ。
明治日本の産業革命遺産がなぜ重要なのか、その理由を理解するためには、まずその歴史的背景を知ることが不可欠です。
これらの遺産は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、日本が西洋の技術を取り入れながら独自の産業化を成し遂げた証拠を物語っています。
急速な近代化を遂げた日本は、製鉄・製鋼、造船、石炭産業を中心に、世界に誇る産業基盤を築きました。
この章では、明治日本の産業革命遺産がどのようにしてその歴史的価値を持つに至ったのか、その背景を詳しく探ります。
英語表記)Sites of Japan’s Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining
登録区分)文化遺産
登録年)2015年
登録基準)(2), (4), (), ()
国内の登録順位)No.19
1850年代から1910年(幕末 – 明治時代)までに急速な発展をとげた炭鉱、鉄鋼業、造船業に関する産業は、日本という国が近代化を遂げるために欠かせないことでした。
文化遺産として残る「明治日本の産業命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、8つのエリアにまたがる23の資産で構成されています。
九州地方を中心に発展した、当時の重工業の歩みを現代に語り継ぐために残されています。
明治日本の産業革命遺産とは?その定義と重要性
明治日本の産業革命遺産は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての日本の急速な産業化を象徴する一連の歴史的遺産です。これらの遺産は、製鉄・製鋼、造船、石炭産業を中心に、日本が西洋の技術を取り入れつつ独自の発展を遂げた過程を示しています。具体的には、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、静岡県、岩手県に点在する23の構成資産が含まれています。
これらの遺産の重要性は、単に技術の進歩を示すだけでなく、日本の近代化と国際的な地位向上を支えた点にあります。西洋からの技術導入とその応用は、日本の工業立国への基盤を築きました。これらの施設や構造物は、当時の技術革新とその後の発展を現在に伝える貴重な証拠となっています。
明治日本の産業革命遺産が登録された時期と背景
登録されたのは2015年なんですね。でも、どうしてこの時期に登録されたんでしょうか?
2015年の登録は、ちょうど日本が近代化の波に乗り始めた時期から150年以上経ったタイミングでした。この遺産群が、単なる過去の遺産ではなく、今なお現代に影響を与えている重要な技術革新の証であることが、改めて認識されたんです。
2015年7月5日、明治日本の産業革命遺産は、ユネスコの世界遺産リストに正式に登録されました。この登録は、ドイツのボンで開催された第39回世界遺産委員会で決定されました。
この背景には、日本の急速な近代化とその成功がありました。19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、日本は西洋の技術を積極的に取り入れ、それを基に独自の産業基盤を築き上げました。この時期の日本は、幕末から明治維新にかけての大きな変革期にありました。特に、製鉄・製鋼、造船、石炭産業は、日本の工業化において重要な役割を果たしました。
これらの遺産が登録されたことにより、日本の産業革命の歴史とその影響が国際的に認められました。ユネスコは、これらの遺産が西洋から非西洋世界への技術移転と、その応用による成功を示す貴重な例であると評価しました。
明治日本の産業革命遺産の登録理由:ユネスコの視点から
ユネスコは、明治日本の産業革命遺産を2015年7月に世界遺産リストに登録しました。その登録理由は以下の通りです。
技術移転の成功例: ユネスコは、明治日本の産業革命遺産が「西洋から非西洋世界への技術移転とその成功」を示す貴重な例であると評価しました。日本は、西洋の技術を積極的に導入し、それを基に独自の技術を発展させました。この過程は、日本の近代化の基盤を築きました。
産業化の象徴: これらの遺産は、日本の急速な産業化を象徴しています。特に、製鉄・製鋼、造船、石炭産業の分野での技術革新は、日本の工業立国への道を開きました。ユネスコは、これらの遺産が日本の産業革命の成功を示す証拠であると認めました。
歴史的価値: ユネスコは、明治日本の産業革命遺産が世界的に見ても顕著な普遍的価値を持つと判断しました。これらの遺産は、単に技術的な遺産ではなく、日本の近代史の重要な部分を物語るものであり、その歴史的価値が評価されました。
これらの理由から、明治日本の産業革命遺産は世界遺産に登録され、国際的にもその価値が認められています。
幕末から明治にかけての産業の発展
明治時代に急速な発展を遂げた重工業。
幕末から明治維新にかけて、日本国内では紡績や繊維産業など軽工業の分野で、個人や家庭で行われていた家内制工業から、国営の工場に労働力と技術を集める取り組みが始まります。
明治維新後は、6〜7年で整備された送電設備、1872年に始めて開通した鉄道による輸送など、国内のインフラは10年前後で大幅に整備されます。
そして、郵送インフラの整備をきっかけに、海岸の湾港都市周辺に重工業の整備が始まります。
発展した時期別の産業
ユネスコの世界遺産登録のために提出された調査資料によると、幕末から明治にかけて発展した重工業は、時期によって「初期・発展期」「産業形成期」の2つに分けられ、産業の種類は「製鉄・製鋼」「造船」「石炭産業」に分けられています。
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」には、九州地方を中心に8か所が登録されています。
「初期・発展期」では、製鉄・製鋼では萩(萩反射炉)、造船では佐賀(三重津海軍所跡)、石炭産業では初期・発展期の軍艦島が含まれる長崎(高島炭鉱、端島炭鉱等)、2つの時期を通して発展した三池(三角西(旧)港)が有名です。
「産業形成期」には、八幡(八幡製鐡所)が製鉄・製鋼の中心とされ、長崎(長崎造船所)が整備されます。
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業の構成資産
萩反射炉(山口県 萩)製鉄・製鋼
恵美須ヶ鼻造船所跡 (山口県 萩)造船
大板山たたら製鉄遺跡 (山口県 萩)製鉄・製鋼
萩城下町 (山口県 萩)
松下村塾 (山口県 萩)
旧集成館 (鹿児島県鹿児島市)製鉄・製鋼 造船
寺山炭窯跡 (鹿児島県鹿児島市)
関吉の疎水溝 (鹿児島県鹿児島市)
韮山反射炉 (静岡県伊豆の国市)製鉄・製鋼
橋野鉄鉱山 (岩手県釜石市)製鉄・製鋼
三重津海軍所跡 (佐賀県佐賀市)造船
小菅修船場跡 (長崎県長崎市)造船
三菱長崎造船所第三船渠 (長崎県長崎市)造船
三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン(長崎県長崎市)造船
三菱長崎造船所旧木型場 (長崎県長崎市)造船
三菱長崎造船所占勝閣 (長崎県長崎市)造船
高島炭坑 (長崎県長崎市)石炭産業
端島炭坑 (長崎県長崎市)石炭産業
旧グラバー住宅 (長崎県長崎市)
三池炭鉱・三池港 (福岡県大牟田市・熊本県荒尾市)石炭産業
三角西港 (熊本県宇城市)石炭産業
官営八幡製鐵所 (福岡県北九州市)製鉄・製鋼
遠賀川水源地ポンプ室 (福岡県中間市)
なぜ明治日本の産業革命遺産が重要なのか?その理由
明治日本の産業革命遺産が世界遺産に登録されるほど重要である理由は、これらの遺産が日本の近代化の象徴だからです。19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、日本は西洋の技術を取り入れながら急速な産業化を遂げました。この過程は、日本が封建社会から近代国家へと移行し、国際的な地位を確立するための重要なステップでした。
技術移転と独自発展:西洋からの技術移転は、日本の産業革命の基礎を築きました。特に、製鉄・製鋼、造船、石炭産業の分野での技術革新は、日本の工業立国の礎となりました。これらの技術は単に導入されただけでなく、日本独自の改良を加えられ、国内需要に適応する形で発展しました。
国際的認知:明治日本の産業革命遺産がユネスコの世界遺産に登録されたことは、これらの遺産が世界的に見ても顕著な普遍的価値を持つことを示しています。ユネスコはこれらの遺産が「西洋から非西洋への技術移転とその成功」を証明するものとして高く評価しました。
歴史的意義:これらの遺産は、単なる技術的遺産にとどまらず、日本の近代史の象徴でもあります。幕末から明治にかけての激動の時代を経て、日本は短期間で近代化を達成し、世界に誇る産業国へと成長しました。これらの遺産は、その過程を現在に伝える重要な役割を果たしています。
明治日本の産業革命遺産一覧:各地の詳細な紹介
明治日本の産業革命遺産は、全国に点在する8つのエリアにまたがる23の構成資産から成り立っています。それぞれの遺産は、日本の産業化の過程を示す貴重な証拠であり、以下の通りに分類されています。
萩エリア(山口県萩市):
- 萩反射炉:日本初の西洋式鉄製大砲を製造した施設。
- 恵美須ヶ鼻造船所跡:幕末に建造された洋式船の造船所跡。
- 大板山たたら製鉄遺跡:江戸時代から明治にかけての伝統的な製鉄所跡。
- 萩城下町:萩藩の城下町で、近代産業化の初期段階を示す。
- 松下村塾:吉田松陰が開いた塾で、多くの明治維新の志士を育成。
長崎エリア(長崎県長崎市):
- 小菅修船場跡:日本最古の西洋式ドック。
- 三菱長崎造船所第三船渠:現在も稼働する造船所。
- 三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン:日本初のカンチレバークレーン。
- 三菱長崎造船所旧木型場:造船のための木型を製作した施設。
- 三菱長崎造船所占勝閣:造船所の管理事務所として使用。
- 高島炭坑:長崎港近くの炭鉱。
- 端島炭坑:通称「軍艦島」として知られる、海上の炭鉱島。
- 旧グラバー住宅:スコットランド出身のトーマス・グラバーの住居。
その他のエリア:
- 旧集成館(鹿児島県鹿児島市):日本初の西洋式製鉄所。
- 韮山反射炉(静岡県伊豆の国市):現存する日本最古の反射炉。
- 橋野鉄鉱山(岩手県釜石市):日本初の連続出銑を成功させた高炉跡。
- 三池炭鉱・三池港(福岡県大牟田市・熊本県荒尾市):日本有数の炭鉱。
- 官営八幡製鐵所(福岡県北九州市):日本初の本格的な製鉄所。
- 遠賀川水源地ポンプ室(福岡県中間市):製鉄所への水供給施設。
これらの遺産は、日本の産業革命とその成功を現在に伝える重要な資産であり、歴史的にも文化的にも非常に価値の高いものです。
長崎県の明治日本の産業革命遺産:特に注目すべきポイント
長崎県には、明治日本の産業革命遺産の中でも特に重要な資産が集中しています。これらの遺産は、日本の産業化の象徴であり、19世紀後半から20世紀初頭にかけての日本の急速な技術革新を示しています。以下に、長崎県の主要な遺産とその特徴を紹介します。
端島炭坑(軍艦島): 端島炭坑は、「軍艦島」として広く知られています。この小さな島は、かつて炭鉱のために開発され、最盛期には5000人以上が住んでいました。島全体が軍艦のように見えることからこの名前が付きました。軍艦島は、日本の石炭産業の歴史を象徴する場所であり、その廃墟は現在も訪れる人々を魅了しています。
三菱長崎造船所: 長崎造船所は、日本初の本格的な造船所として知られています。特に、ジャイアント・カンチレバークレーンは、日本初の大型クレーンとして現在も稼働しています。また、第三船渠や旧木型場も、当時の先進的な技術を物語る重要な遺産です。これらの施設は、長崎が日本の造船業の中心地として発展した歴史を示しています。
旧グラバー住宅: スコットランド出身のトーマス・グラバーの住居である旧グラバー住宅は、日本で最も古い現存する木造洋風建築です。グラバーは、明治時代の日本の産業化に大きな影響を与えた人物であり、その住宅は当時の西洋技術の導入と日本への影響を象徴しています。
これらの遺産は、長崎が日本の産業革命において重要な役割を果たしたことを示しています。長崎の遺産を訪れることで、当時の技術革新とその影響を直接感じることができます。
参照サイト:ユネスコ世界遺産センター公式サイト
世界遺産検定公式過去問集(4級)からの例題
Q1.全国8県に点在する「明治日本の産業革命遺産」は、日本の近代化を支えた重工業関連分野の施設や遺構が登録されています。この遺産に関連する分野として、当てはまらないものはどれでしょうか。
1. 造船業
2. 自動車工業
3. 石炭産業
4. 製鉄、製鋼業引用元: 世界遺産検定公式過去問集(p71,2018年3月世界遺産検定4級)
Q2.「明治日本の産業革命遺産」に含まれる工場や施設で取り組まれた主な産業として、正しくないものはどれでしょうか?
1. 蒸気船の建設
2. 鉄の製造
3. 石炭の採掘
4. 綿織物の生産引用元: 世界遺産検定公式過去問集(p80,2018年7月世界遺産検定4級)
Q3.「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が示す「日本の急速な近代化」を表す英語で、文中の空欄に当てはまるものはなんでしょうか。
the ( ) modernization of Japan1. rapid
2. historical
3. strong
4. sudden引用元: 世界遺産検定公式過去問集(p94,2018年9月世界遺産検定4級)
Q4.次の中で、全国8県に点在する23資産で構成されるシリアル・ノミネーション・サイトである世界遺産はどれでしょうか?
1. 明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業
2. 石見銀山跡とその文化的背景
3. 平泉‐仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
4. 紀伊山地の霊場と参詣道引用元: 世界遺産検定公式過去問集(p95,2018年9月世界遺産検定4級)
解説: 「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、全国8県に点在する23の資産で構成されるシリアル・ノミネーション・サイトとして登録されています。シリアル・ノミネーション・サイトとは、複数の関連する遺産が一つの世界遺産として登録されることを意味します。他の選択肢は、シリアル・ノミネーション・サイトではありません。
Q5.「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は九州地方を中心に全国8県に点在する資産で構成されます。このように同じような特徴や背景をもつ遺産を、ひとつの世界遺産として登録したものを何と呼ぶでしょうか。
1. シリアル・ノミネーション・サイト
2. スペシャル・ヘリテージ・サイト
3. シリアル・ビルディングス
4. スペシャル・ビルディングス引用元: 世界遺産検定公式過去問集(p105,2018年12月世界遺産検定4級)
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のお話はいかがでしたか?
世界遺産検定の過去問は、正解できましたか?
現代の大都市の発展、身近な生活用品に使われる日本の技術は、産業の発展の積み重ねによって培われてゆきました。
普段使っている日用品を眺めながら、幕末から明治時代にかけて日本の重工業の発展を思い浮かべるのも、歴史を敬う素敵な時間の過ごし方ですよね。
先生、これだけ多くの遺産が日本中に点在しているんですね。全部見て回るのは大変そうだけど、どこから回ればいいんでしょう?
そうですね、ユウ。それぞれの遺産が持つ独特の歴史と魅力を考えると、まずは自分の興味に合った分野から始めるといいですよ。例えば、造船業に興味があるなら、長崎の遺産を訪れるのが良いかもしれませんね。
まとめ
- 明治日本の産業革命遺産は19世紀後半から20世紀初頭にかけての日本の産業化を象徴する
- 西洋の技術導入と日本独自の発展を示す歴史的遺産群である
- 2015年にユネスコ世界遺産に登録された
- 全国8県に点在する23の構成資産から成る
- 製鉄・製鋼、造船、石炭産業が主な分野である
- 日本の近代化と国際的な地位向上を支えた重要な遺産である
- 西洋からの技術移転とその成功例として評価される
- 長崎県の端島炭坑(軍艦島)は日本の石炭産業の歴史を象徴する
- 三菱長崎造船所は日本初の本格的な造船所である
- 旧グラバー住宅は最も古い現存する木造洋風建築である
- 明治日本の産業革命遺産は技術革新の証拠である
- これらの遺産は日本の工業立国の基盤を築いた
- 明治日本の産業革命遺産は日本の近代史の重要な部分を物語る
- ユネスコはこれらの遺産を世界的に見ても顕著な普遍的価値があると評価した
- 九州地方を中心に発展した重工業の歩みを今に伝える