1979年は、世界遺産制度が始まってわずか2年目にあたる年です。前年の1978年にわずか12件だった登録数は、この年に一気に45件へと急増し、世界中の注目が集まる制度へと広がりを見せました。
この記事では、そんな「1979年に登録された世界遺産」をわかりやすく整理し、注目すべき遺産や傾向、制度の背景まで丁寧に解説していきます。すでに個別記事でご紹介した全登録物件も一覧で掲載しており、読みながらそのままリンクをたどることも可能です。
また、「世界遺産っていつ始まったの?」「なぜ富士山は選ばれていなかったの?」といった素朴な疑問にも触れながら、1979年という世界遺産制度にとって重要な節目を一緒に振り返っていきましょう。
・1979年に登録された世界遺産の一覧と特徴
・1978年との制度的な違いと拡大の背景
・登録された遺産の文化・自然の内訳や注目物件
・富士山や厳島神社が登録されなかった理由や関連性
1979年 世界遺産の特徴と背景
1979年に登録された注目の世界遺産
自然遺産と文化遺産の割合は?
世界一危ない世界遺産が含まれている?
1979年は世界遺産制度が本格始動した年です。登録件数の増加とその背景をコンパクトに解説します。

先生、1979年ってどうしてそんなにたくさん世界遺産が登録されたんですか?

いい質問だね。実はこの年、制度への信頼が高まり、多くの国が積極的に推薦を始めたんだ。まさに「制度が動き出した年」と言えるよ。
1978年との違いと制度の広がり
1979年は、世界遺産制度の広がりを実感できる年となりました。
というのも、前年度の1978年には12件しか登録されていなかったところ、1979年には一気に45件が登録され、制度への信頼と関心が急拡大したことが分かります。
この急増の背景には、世界遺産条約に署名した国の増加とともに、文化・自然の保護に対する国際的な意識の高まりがありました。とくにヨーロッパ諸国を中心に、多様な遺産が登録されたことが制度の定着に貢献しています。
言ってしまえば、1979年は「世界遺産制度が本格始動した年」とも呼べる節目だったのです。

世界遺産制度が始まり大きく広がりを見せた1979年。当時の文化的背景と制度の拡大を表す象徴的なイメージです。
1979年に登録された注目の世界遺産
登録数が一気に増えた1979年には、今でも高い人気を誇る世界遺産が多く含まれています。
その中でも注目されるのが、アメリカのグランド・キャニオン国立公園や、ペルーのマチュ・ピチュの歴史保護区など、知名度も保存価値も高い自然遺産・文化遺産です。
また、1979年には初の産業遺産(ドイツのエッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群)も含まれており、これまでの「遺跡や寺院中心」という認識に多様性をもたらしました。
こうした登録は、今後の世界遺産選定の方向性にも大きな影響を与えています。

1979年に登録された注目の世界遺産、マチュ・ピチュとグランド・キャニオンの魅力を象徴する幻想的な景観イメージです
自然遺産と文化遺産の割合は?
この年に登録された45件の世界遺産のうち、文化遺産が34件、自然遺産が8件、複合遺産が3件という内訳になっています。
ここからわかるのは、当時はまだ文化遺産の登録が中心であったということです。
この傾向は制度初期に特に強く、歴史的建造物や宗教施設、遺跡といった「人類の文化的価値」に重点が置かれていたのが特徴です。
ただし、自然遺産も少しずつ評価され始めており、この後の登録傾向に変化が生まれていくことになります。

文化遺産と自然遺産の特徴を1枚にまとめた比較イメージ。世界遺産の分類に関する理解を深める一枚です
世界一危ない世界遺産が含まれている?
実は、1979年に登録された世界遺産の中にも、現在「危機遺産リスト(危険にさらされている世界遺産)」に掲載されたものがいくつか存在します。
例えば、イエメンの旧サナア市街などはその代表例で、戦争や都市開発により保存が困難になっている状況です。
また、自然遺産でも密猟や気候変動により脅かされている地域があります。
世界遺産に登録されたからといって、保護が万全とは限りません。
むしろ、登録されたからこそ国際的な協力による保全の重要性が問われるようになります。

戦争や破壊の脅威にさらされる危機遺産の実情を象徴する、悲劇的かつ現実的なイメージです
1979年 世界遺産一覧と今後の展望
各国別に見る1979年の世界遺産
厳島神社と1979年との関係は?
富士山が1979年に選ばれなかった理由
世界遺産の登録数と2024年最新状況
ここからは、実際に登録された世界遺産の一覧と、それをもとにした分析・補足情報を紹介します。
また、近年の登録状況もあわせて取り上げ、今後の世界遺産制度の動きについても触れていきます。

こんなにたくさんの世界遺産があると、どこから見たらいいか迷いますね。

だからこそ一覧で整理することが大切なんだ。気になる遺産をピックアップして、学びを深めていくといいよ。
1979年に登録された世界遺産一覧まとめ
1979年には、文化遺産・自然遺産・複合遺産をあわせて合計45件の世界遺産が登録されました。
この記事では、それらを10件ずつのグループに分けて、個別に紹介してきた記事へのリンクを一覧形式でご紹介しています。
興味のある遺産だけをピックアップして読むことができるため、時間がない方にもおすすめです。
読み物として楽しむのはもちろん、旅行計画や学習資料としても活用しやすい構成になっていますので、ぜひブックマークしてお役立てください。
✅ No.1〜10(表1)
No. | 世界遺産名 | 国名 | 分類 |
---|---|---|---|
1 | メンフィスとその墓地遺跡 | エジプト | 文化遺産 |
2 | モン=サン=ミシェルとその湾 | フランス | 文化遺産 |
3 | ペルセポリス | イラン | 文化遺産 |
4 | グランドキャニオン国立公園 | アメリカ | 自然遺産 |
5 | サガルマータ国立公園 | ネパール | 自然遺産 |
6 | カトマンズ盆地 | ネパール | 文化遺産 |
7 | 古代都市テーベとその墓地遺跡 | エジプト | 文化遺産 |
8 | 州立恐竜公園(ダイナソール州立公園) | カナダ | 自然遺産 |
9 | ティカル国立公園 | グアテマラ | 複合遺産 |
10 | ドゥブロヴニク旧市街 | クロアチア | 文化遺産 |
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✅ No.11〜20(表2)
No. | 世界遺産名 | 国名 | 分類 |
---|---|---|---|
11 | アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群 | エジプト | 文化遺産 |
12 | 古都ダマスカス | シリア | 文化遺産 |
13 | プリトヴィッツェ湖群国立公園 | クロアチア | 自然遺産 |
14 | カイロ歴史地区 | エジプト | 文化遺産 |
15 | アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所 | ポーランド | 文化遺産 |
16 | ボヤナ教会 | ブルガリア | 文化遺産 |
17 | チュニス旧市街 | チュニジア | 文化遺産 |
18 | ヴィルンガ国立公園 | コンゴ民主共和国 | 自然遺産 |
19 | オフリド地域の自然・文化遺産 | 北マケドニア | 複合遺産 |
20 | スタリ・ラスとソポチャニ | セルビア | 文化遺産 |
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✅ No.21〜30(表3)
No. | 世界遺産名 | 国名 | 分類 |
---|---|---|---|
21 | コトルの自然と文化歴史地域 | モンテネグロ | 複合遺産 |
22 | ヴェルサイユの宮殿と庭園 | フランス | 文化遺産 |
23 | シャルトル大聖堂 | フランス | 文化遺産 |
24 | エスファハーンのイマーム広場 | イラン | 文化遺産 |
25 | ヴェズレーの教会と丘 | フランス | 文化遺産 |
26 | ヴェゼール渓谷の先史的景観と装飾洞窟群 | フランス | 文化遺産 |
27 | カザンラクのトラキア人の墳墓 | ブルガリア | 文化遺産 |
28 | ヴァルカモニカの岩絵群 | イタリア | 文化遺産 |
29 | チョガ・ザンビール | イラン | 文化遺産 |
30 | クルエーン/ランゲル=セント・イライアス〜 | カナダ・アメリカ | 自然遺産 |
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✅ No.31〜40(表4)
No. | 世界遺産名 | 国名 | 分類 |
---|---|---|---|
31 | アブ・メナ | エジプト | 文化遺産 |
32 | スプリトのディオクレティアヌス宮殿 | クロアチア | 文化遺産 |
33 | ブリッゲン | ノルウェー | 文化遺産 |
34 | ウルネスの木造教会 | ノルウェー | 文化遺産 |
35 | エバーグレーズ国立公園 | アメリカ | 自然遺産 |
36 | カルタゴ遺跡 | チュニジア | 文化遺産 |
37 | エルジェムの円形闘技場 | チュニジア | 文化遺産 |
38 | インディペンデンス・ホール | アメリカ | 文化遺産 |
39 | イヴァノヴォの岩窟教会群 | ブルガリア | 文化遺産 |
40 | マダラの騎馬像 | ブルガリア | 文化遺産 |
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✅ No.41〜45(表5)
No. | 世界遺産名 | 国名 | 分類 |
---|---|---|---|
41 | ゴンダール地域のファジル・ゲビ | エチオピア | 文化遺産 |
42 | ガーナの要塞と城塞群 | ガーナ | 文化遺産 |
43 | アンティグア・グアテマラ | グアテマラ | 文化遺産 |
44 | アンティグア・グアテマラ | ポーランド・ベラルーシ | 自然遺産 |
45 | ンゴロンゴロ保全地域 | タンザニア | 複合遺産 |
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各国別に見る1979年の世界遺産
1979年の登録遺産を国別に分類すると、イタリア、フランス、ドイツ、アメリカ、ペルーなどが目立ちます。
特にヨーロッパ諸国からの登録が多く、制度初期における文化遺産重視の傾向が色濃く出ています。
このように国ごとに分けてみると、その国がどのような遺産を重視していたのかや、国際的な文化交流の流れも見えてきます。
今後の登録動向を予測する上でも参考になる視点です。

1979年に登録された世界遺産を象徴する遺跡や自然景観をまとめた一枚。世界遺産制度が本格化した年を表現しています
厳島神社と1979年との関係は?
厳島神社が世界遺産に登録されたのは1996年であり、1979年には登録されていません。
ただし、世界遺産制度が本格化した1979年前後から日本国内でも登録に向けた関心が高まっていたことは確かです。
この背景には、1978年に条約を締結した日本が、どの文化財を推薦するか検討を始めた時期であったことが挙げられます。
厳島神社はその後、文化遺産として登録されることになりますが、1979年はその「準備段階」と言えるタイミングでした。

厳島神社の象徴ともいえる大鳥居が、静かな海と夕暮れ空に美しく浮かぶ印象的な一枚です
富士山が1979年に選ばれなかった理由
富士山が世界遺産に登録されたのは2013年と比較的最近のことです。
1979年の時点で選ばれなかった理由としては、自然環境の保護体制が不十分だったことや、文化的側面の評価がまだ確立されていなかったことが挙げられます。
当初は自然遺産としての登録を目指していましたが、結果的には「信仰と芸術の源泉」としての文化遺産としての価値が評価されました。
こうした事例は、世界遺産登録に必要な視点の変化を物語っています。

富士山と紅葉が湖面に映る幻想的な風景は、自然遺産としての価値とともに文化的象徴としての魅力を映し出しています
世界遺産の登録数と2024年最新状況
2024年時点で、世界遺産の登録数は1,200件を超えています。
その内訳は、文化遺産・自然遺産・複合遺産がバランスよく増加しており、制度開始から45年で大きく進化しました。
ただし、登録件数が増える一方で、オーバーツーリズムや保全問題も深刻化しているのが現状です。
ユネスコも「質の維持」と「持続可能な保護」に重きを置く方向へと舵を切っています。
このように、1979年の45件から始まった広がりは、今もなお進化を続けているのです。

1979年って、ただ古いだけじゃなくてすごく意味のある年だったんですね!

そうなんだ。この年を境に、世界遺産は国際的な文化と自然保護の柱として広がっていったんだよ。
まとめ|1979年世界遺産を総まとめで振り返る
-
1979年は世界遺産登録件数が初めて大幅に増加した年
-
合計45件が登録され、制度が本格的に機能し始めた
-
文化遺産の割合が多く、制度初期の傾向が色濃く出ている
-
自然遺産や複合遺産も徐々に評価され始めた
-
アメリカやヨーロッパ諸国からの登録が中心だった
-
グランド・キャニオンやマチュ・ピチュなど著名な遺産が含まれている
-
一部の登録遺産は現在「危機遺産リスト」にも指定されている
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日本国内でも1979年前後から登録に向けた動きが活発化した
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厳島神社はこの年には未登録だが、後の登録準備の時期だった
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富士山は保護体制の不備から1979年時点では登録されなかった
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世界遺産登録の評価基準は時代とともに変化してきている
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各国の文化的価値観が登録遺産にも反映されている
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当時の登録物件は今なお高い観光価値と学術的価値を持つ
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世界遺産制度が国際的な文化保護の象徴となっていった時期である
-
登録件数は2024年には1,200件を超え、制度は大きく拡大している
このように、1979年は世界遺産の歴史において重要な転換点となった年といえます。